株式投資型クラウドファンディングGoAngelを活用して1600万円の資金を調達した悟中株式会社とはいったいどんな会社なのか。そしてその悟中が経営する「銀座鮨 醇」とはどのような店なのか。銀座で和食の店を開業するのが夢だったという悟中株式会社・代表取締役、廣瀬真由加さんに話を聞いた。
最長1か月の熟成で魚の旨味を引き出す
「銀座鮨 醇」は高級すし店の激戦区、銀座八丁目の飲食ビルの中にある。表に看板もなく、指紋認証装置のみが設置された扉があるだけ。ぜいたくな大人の隠れ家といった趣だ。開業は2017年1月。1年間のプレオープン期間を経て、2018年1月から本格オープンした。
銀座鮨 醇は熟成鮨の専門店。独自の保存技術によって魚の身を熟成させ、旨味を引き出す。今でこそ江戸前のすしといえば獲れたての新鮮さがウリだが、冷蔵庫などなかった江戸時代には職人が昆布や酢で締めたり、塩漬けにするなどして保存していたという。
銀座鮨 醇では、そんな伝統の保存技術に加え、熟成専用の冷蔵庫(恒温恒湿庫)を活用してさらに美味しい熟成鮨を作ろうと、独自の研究を重ねてきた。
「大学等にご協力を仰ぎ、魚の栄養素や旨味がピークになる時期や熟成環境を研究してきました」と語るのは、悟中株式会社の代表取締役、廣瀬真由加さんだ。
魚の熟成と言うと、鮮魚を2、3日寝かした状態を想像するかもしれないが、「醇」の熟成鮨は魚種によっては1か月も熟成させるというから驚く。中でも看板メニューが、3週間熟成させた鰤(ぶり)。新鮮な鰤のすしとは別物と言っていいほどの深い甘みと旨みが特長だ。その味に惹かれて、銀座鮨 醇には一部上場企業の部長・役員クラスが、自社の顧客や知人を連れてやってくる。
「長寿社会を迎えて健康志向が高まる中、エコでヘルシーなお食事メニューとして広めていきたいです」(廣瀬さん)
熟成鮨専門店にしたのは、他店との「差別化」を図るためだという。熟成鮨の専門店は全国でも10店舗程度。銀座でも異彩を放っている。ではなぜ廣瀬さんはあえて、すし屋激戦区の銀座に出店したのか。
「長年、お店を出すなら日本一の繁華街の銀座がいいと思っていました。ここでは5万円のすしを出すお店が何か月も先まで予約で埋まっているんです。銀座ですし屋を開けば商売になると見込んで勝負に挑みました」(廣瀬さん)
「醇」のもう一つの特徴は、会員制をとっていることだ。
「飲食店はフレンチでもイタリアンでも結局のところ『回転率×客単価』のビジネスモデルです。でも私は回転率ではなく、お客様の満足度を重視したビジネスをしたいと思ってきました。行き届いたサービスを提供するためにも会員制にすることに決めました」
高校時代のアルバイトで自分のお店を持つことが夢に
廣瀬さんが自分の店を持ちたいと思うようになったのは、高校時代にファミリーレストランでアルバイトをしたことがきっかけだった。
「親が厳しくて、バイトはファミレスしか許してもらえなかったんです。それだけ当時のファミレスはマナーや接客の教育が厳しかった。しかし私はお客様からありがとうと言われる喜びを知り、将来自分でお店を持ちたいと思うようになったんです」
その後、大学に進んだ彼女は当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった大手焼き肉チェーンのある店舗でアルバイトを開始。2日目にして店長に指名されたという。そして全国のチェーン店の中でも全国表彰されるほどの高売上店に成長させた。
ところが、廣瀬さんはお店が繁盛すればするほど客に利用時間を制限したり、店外で待たせてしまったりする状況に「本当にお客様に満足していただけているのか」と疑問を抱くようになる。「回転率×客単価」のモデルに限界を感じ、焼き肉チェーンを去る。そして廣瀬さんは会員制の店を持つための修行を始めた。
「高級ホテルのラウンジからゴルフ場、高級クラブからシガーバーまで、一通り会員制ビジネスのアルバイトをしてみました。その後は銀座でマジックバーのお店も開きました。その結果、銀座は会員制のお店が合うことがわかったんです。同時に、銀座にはたくさんの高級なすし店があって、クラブ並みの値段なのに、どの店も満席になっている光景が目に焼きついていました」
着々と経験を積んでいた彼女だが、ある出来事を機に勝負に出ることを決意する。
「東京でオリンピックが開催されることになり、チャンスが来た!と思ったんです。世界最大の祭典に合わせて開業し、日本を訪れた世界の人たちに日本の伝統的な食文化を振る舞いたい」と思いたったのだという。
さっそく物件を探し始め、2016年9月に悟中株式会社を設立。老舗がひしめく銀座で鮨屋を開くことに迷いはなかった。
「当初は和食の店を出したいと思っていましたが、和食は幅が広くて、商売の肝がわかりづらいんです。それに比べて鮨屋はネタが数えられる分、仕入れもイメージできるし、客層やニーズも読める。しかも銀座ではどこのすし屋も繁盛していますから、やるならすし屋だと思いました」
これまでの銀座での実績やつきあいを通じて手ごろな物件を好条件で借りられることになり、2017年の初頭に銀座鮨 醇のオープンに漕ぎつけたのだった。
日本の和食の魅力を熟成鮨で広めたい
だが、夢は叶ったものの売り上げが思うように伸びない。廣瀬さんはそれまでの人脈で一定の顧客はつかんでいたのだが、予想以上に経費がかかった。
すし屋の創業は大将とその奥さんとで切り盛りして徐々に売り上げを伸ばしていくのが一般的だ。が、廣瀬さんのビジネスは、オーナー会社が店舗を運営し、そこに職人と店長を採用して配置するモデル。当然、売上に関係なく人件費は固定費としてのしかかる。その上、熟成鮨の研究も進めていたため、その分の経費もかかった。
さらに頭を悩ませたのは、鮨職人の採用にかかる費用だったという。
「腕のある職人はなかなか見つからないし、ようやく採用できても考え方の違いで辞めていく人も多かったんです。そのたびに採用費用がかかりました」
金融機関に融資の相談に行ったものの、門前払いに近い扱いを受けたと笑う。
「チェーン店の店長としてのキャリアもあり、銀座でもそこそこ実績を作ってきたので、簡単に融資をしてもらえると思っていたのですが、そうはいきませんでした。飲食業って信用がないんです。」
金融機関に支援をしてもらえないなら、ほかの方法で資金を調達するしかない。よい方法はないかと考えた末に選んだのが、株式投資型クラウドファンディングGoAngelだ。
GoAngelを活用して1600万円の資金を調達したことは、活用事例紹介で取り上げた。
このときの資金によって経営を立て直し、計画通り浦和に2号店をオープン。浦和店はカウンターの横にフェラーリの実車を飾るという大胆な内装で話題を呼んでいる。
今は来る2020年の東京オリンピックに向けて、さらにサービスと熟成鮨の質を上げているところだ。
「既存のお客様だけを相手に同じサービスを提供するだけでは、将来頭打ちになると思います。これからさらに発展するには、外からお客様を呼び込む努力が必要。私は既存のすし業界に新風を吹き込みたいと思っています」
廣瀬さんは銀座だけでなく、世界への進出を見据えてもいる。
「熟成鮨は匂いやクセもなく、味もまろやかなので、生のお魚が苦手な外国人のお客様にも喜んでもらえる食べ物です。日本を訪れた海外の人たちに日本伝統の食文化のよさを知ってもらうことで、海外にお店を持つきっかけもつかみたいと思っています」
(取材・構成:ライター・大島七々三)
銀座鮨 醇 Makuakeプロジェクト成功しました!
完全会員制の熟成鮨店「銀座鮨 醇」が、購入型クラウドファンディングMakuakeでプロジェクトを実施(2018/12/7〜12/27)し、募集に成功しました!
ついに登場!入り口は指紋認証。銀座8丁目の完全会員制の熟成鮨店で新規会員大募集!
https://www.makuake.com/project/ginza-jun/