2018年1月に株式投資型クラウドファンディングGoAngelを活用して2000万円の資金と50人の株主を獲得した株式会社グローバルゲイツ。貿易事業を中心に事業を展開してきたが、5年前から新規事業として始めたホテルのハウスキーピングが時代のニーズをとらえ、急拡大を遂げている。今年からはいよいよ海外展開も本格的にスタートする。なぜハウスキーピング事業に注目し、取り組んでいるのか。その経緯と今後の展開について梅村真行・代表取締役会長に話を聞いた。
「ホテルは世界のどこにもありますが、客室の清掃業務はどの国でも、誰もが好んでやりたがらない仕事です。しかしホテルがある限り、誰かがそれをやる必要がある。だったらうちでやろうじゃないかとこのビジネスを立ち上げました」
梅村さんは5年前から取り組んできた新規事業についてそう語る。
グローバルゲイツは2007年創業。貿易事業と広告会社を中心に事業をスタートした。ホテルのハウスキーピング事業を始めたのは5年前、取引先のビルメンテナンス会社が経営難に陥っていたのを引き取ったがきっかけだった。
ところが、いざ始めてみると労力の割に薄利で赤字の連続。事業を黒字に変える仕組みを考え続けてきたという。その末にたどり着いたのは、清掃業とベッドメイキングの効率的な作業工程の見直しだった。
昨年まで東京のホテルを中心に、一都三県で事業を展開してきたが、昨年12月からは北海道でも事業をスタート。さらに今年から京都、福岡、沖縄にも進出する。一つの清掃業務の実績が他のホテルを呼んでくるといった形で急拡大している。
海外展開も本格的に開始した。今年、台湾、ミャンマー、モンゴル、ハワイで事業の準備を進めているという。今期の売上は6億円だが、来期は倍以上の14億円になることがほぼ確実となっている。
「対象となるホテルは世界にありますから、この仕組みで世界に事業を広げられると考えています」
世間の評価を知るためにGoAngelにチャレンジ
グローバルゲイツは貿易事業を主軸に事業をスタートした。その後まもなく、取引先だったJR九州の関連会社からLED照明器具の開発依頼を受け、世界初となる蛍光灯タイプのLEDを開発。日経新聞でも大きく取り上げられる。
妻と二人で細々と運営していた会社が、この日を境に世界中からスポットが当てられることになったのだ。
でき上がった世界初のLED蛍光灯は鷹ノ巣駅(福岡市東区)に設置され、翌月には全国販売を開始。その3年後に起きた東日本大震災によって、省エネ需要が高まりLED蛍光灯の注文が殺到した。梅村さんはそれを機に本社を福岡から東京へ移転する。
「その後、たまたま取引のある清掃会社から、会社を続けていけないから、社員を引き取ってくれないかと頼まれたのが現在のハウスキーピングの仕事でした。その会社はホテルのお仕事を長年やっていたんです。私にとってホテル事業は馴染みのある世界ですし、昔お世話になったということもあって、これもご縁だと思いました」
そこから貿易事業やLED照明事業と並行して、ホテル清掃の事業を開始した。ところがやってみて改めて厳しいビジネスだということがわかった。
「黒字になる目途が立たないんです。そもそも事業として見込があるのかと悩んでいた時、株式投資型クラウドファンディングGoAngelを知りました。この仕組みを利用して、一度、世間の人に事業として有望なのかどうか、聞いてみようと思ったんです」
誰も株主になってくれなかった時は、きっぱりとあきらめようと思っていたという。
GoAngelを利用した株主募集は2017年12月から1月にかけて行われ、無事に目標額の2000万円と50人の株主を獲得することに成功。
「株主の後押しをもらい腹を決めました。この事業を社会貢献のつもりで世界に普及させようと決心したんです」
ハウスキーピング事業の普及のため協会を設立
GoAngelを活用した後、着実に契約先を広げていった。今ではハウスキーピング事業が、グローバルゲイツの経営に安定をもたらしているという。
「薄利ではありますが、毎月一定数の収入が見込めるうえ、店舗がいらない事業なので、経営は安定しました。しかも日本だけでなく、アジア各国でホテル建設ラッシュが続いていて、ニーズはますます高まっていますから、さらに事業を拡大していきたいと思っています」
現在、グローバルゲイツの社員は65人。ただしパート・アルバイト、フランチャイズの事業店や関連事業を合わせると、世界に1000人を越えるスタッフを抱えているという。
「すでに海外には現地で研修を終えた200人の外国人スタッフがスタンバイしています」
今年から毎年、45人ずつ正社員を採用していく予定だという。一気に事業が拡大している中で、問題は人材の確保だ。一人でも多くの人材が必要だが、かといって人数がいればいいというわけではない。
そこで考えたのが、ハウスキーピングの資格制度だ。梅村さんは今年、日本ハウスキーピング協会という社団法人を設立して、研修と資格取得の制度をスタートさせる。
「誰もが30日間の研修を受ければ資格を取得できて、すぐにハウスキーピングの仕事ができるようになります。同時にアジアの収入の少ない地域の人たちの暮らしを向上させる一つの手段にしてもらいたいという思いもあります」
世界的なリゾートホテルチェーンの仕事も一本のメールから
梅村さんはこのハウスキーピング事業をたまたま当てたわけではない。常に新規事業を手がけている中で、うまくやれば必ず大きくなると読んでいたという。
「AIが普及すると今ある仕事の半分が無くなると言われていますが、清掃やベッドメイキングといった仕事は簡単にはロボットやAIには切り替わりづらいですよね。私はこういう産業をなくしたくないという思いがありました」
とはいえ既存の事業を運営している中で、大掛かりな新規事業を始めるには人員も足りなかったはずだ。
「もともと小規模な会社ですから、新規事業を始めるのは大変です。社員は私が新規事業を始めるたびに、手一杯でとてもできない、と言います。しかし会社を存続させるうえで新規事業は非常に重要です。それは経営的なメリットだけではありません。新規事業を手掛けることで社員も幹部も、仕事に緊張感をもって臨むようになる効果が大きい」
新規事業の芽を見つけるためには、常にアンテナを張っていなければならない。梅村さんは気になることがあればすぐに調べ、会いたい人がいたら、躊躇なく連絡を入れるという。
相手が著名なコンサルタントや有名企業の社長でも「会っていただけませんか」と直接メールを入れる。
「まずは連絡を入れる。直接お会いしてこちらの内容ををちゃんと説明すれば、相手は理解してくれるものです。もちろん連絡してもお返事をいただけないことは沢山ありますし、お会いしてもまったく理解してもらえないこともあります。それでもマイナスではありません」
「100人に会って1人、わかってくれる人がいればいい、と言う気持ちで毎日、沢山の方々とお話をさせて頂いています。平日はもとより、土日も含めて、オフィスにいることはほとんどございません」
トップ営業の鏡のような人物だ。
迷ったらGO!
「人間いつ死ぬかわからないです。あれこれ悩んだり、考えたりするより、やりたいことはやることが大事ですよ」
『迷ったらGO』が梅村さんの口癖だ。将来、IPO(新規株式上場)をすることも視野に入れているという。
「キャピタルゲインを得たいわけではないんです。ハウスキーピング事業は世界の人が働けるとても大切なインフラです。だから簡単に潰れないだけの、しっかりした経営基盤を作っておきたい。そのうえで、次の人にバトンを渡したいと考えています」
世界のどこに出かけても観光の印象を決めるのは客室の清潔さだ、というのが梅村さんの持論だ。世界にホテルがある限り、質のいいハウスキーピングサービスは欠かせない。
「世界中のホテルに快適な清掃とメンテナンスを施すことで500万人の雇用を創出することが、私は会社の使命としてこれからもやっていきたい」
グローバルゲイツはホテルという舞台を通じて、社名通り世界の扉を開いている。
(取材・構成:ライター・大島七々三)